變體假名除外後の平假名を、築地の假名の字形のなかで「主字形」と名づけるとすると、築地活版明治19年以後六號假名(以下後期六號假名)のなかで、「主字形」でいまのところ複數の字形を確認したのは、「か」「し」「と」「ど」「よ」「ゑ」「ん」の7種類である(ただし、「と」「ど」に關しては、見本帖内の順番としては、2番目以降に屬す、マイナー種である。3筆で描くメジャー種に對して、このマイナー種は1筆、或は2筆で描く。2筆のもののはうが後に登場。「ん」に關しては、筆を返していま下ろしてきたところから離れる位置が微妙に異なる。母型の變形か)。變體假名では「お(於)」「き(貴)」。必ずしも改刻なのではなく、途中で變つたものが、後に又元に戻る場合も見られる。見本帖を離れて、實例を二點見た限りでは、數種のヴァリアントが混用されてゐたらしい。
實例として參照したのは、次の二點。
・文學博士新村出編纂『辭苑』博文館、1935。
・石川巖撰「明治初期戲作年表」(日本文学研究資料刊行会『〈日本文学研究資料叢書〉日本近代文学の書誌-明示編』有精堂出版、1982所收)出版者不明、昭和2年。
「か」最初形は2劃目の長さが極端に短いが二次形では逆にのびすぎの嫌ひがある。見本帖では「が」に變化は見られないが、參照實例では「が」も「か」二次形に同じくする。二次形は明36『活版見本』にのみ見本帖では見られる。築地ではないが、秀英舍『活版見本帖』(明36)の六號「か」字形がのちの六號字形に繋がる形で興味深い。
「し」最初形は一筆で描くが、二次形では筆をちよんと置いてから筆を下ろす。二次形は明36『活版見本』のみ見られた。
「と」「ど」最初形ではくるんと丸めて一筆で書ききるのだが、二次形ではいまの多くの書體がさうするやうに、ご丁寧に止めてゐる。參照實例雙方とも二次形を採用。
「よ」最初形は筆を下ろして左下に流すが、二次形では横に引いてから縱に移る。明36『活版見本』にのみ見られた。
「ゑ」最初形は「る」の最後の囘轉をしないが、二次形ではする。見本帖では明36『活版見本』にのみ見られるが、「戲作年表」では二次形を採る。
「ん」最初形と二次形の違ひは、上述の通り。明19『新製見本』にのみ見られた。參照實例では雙方とも最初形を採用。
これくらゐで何を發表してるのだといふ指摘は考慮濟みです。
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——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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