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2012年5月5日(土)

岡田眞澄『假字考』序

よく讀めないので,公開してしまふ。勉誠社文庫89影印本を用ゐた。ざっと眺めるかぎり,おほかたは國語學大系本などとも變らないだらうと思ふ。ゐがは まことさんの御指摘に從ひじゃっかんの訂正を施した。記して感謝申し上げる。

*凡例1r
凡例
○凡この書は幼稚の人に假字の源をしらせむ
ための略本にて全くは豫の考おきし五くさの
書を合見て明なるへしその五種の書といふは一には
本朝書話とてわか國人の書論といへは一場の説
話まても國史より始て物語歌集に至るまて眞
字假字によらす文字のことにかゝりたる類は墨硯
紙筆の論まてもあまねく集めおけり二には本朝墨
帖論とて古人の書の今に殘れる鐘銘碑銘縁記
の類其外廣くあけて眞僞時代を論せり三に假
字類叢は古人のかなを其まゝ模寫し古しへの筆

*凡例1v
意をしらしむ四に假字類辨と云は古人の書な
たらかなれは〓〓〓又〓〓なとの類同體にし
てまきらはし依て其筆意を本字より正し論
せり五に連假字格は上下の勢により畫をは
ふける例又二三字合せて〓〓〓と〓〓ヿ
又々〻〳〵〳〵此ゆすりの例また今の俗
にゟ〓〓なと書て何と云文字なる事を
しらぬ人多けれはその故をときしらせなとした
りさて此五部の書を照し考て全かるへきに卷
數もまさりいときなき人の見るにわつらはしけ
れは今おほよそをしらしむる爲に此の二卷とはな

*凡例2r
しぬるなり
○凡此書文字の轉し來る序次は楷書をもて先と
しさて行書草書假字と次第をおへりしかるに
草書は楷書より出すして篆書よりいてたるもの
なりと云説も早よりいひ傳へてけに全く篆文
をもとゝせし樣に見ゆる文字もあれとこと〳〵く
篆文より流來し物といはむはいとかたくなゝる僻説
とおもはる楷書にもと付し有篆書にもと付
しも有といはゝさも有ぬへしされと實は皆
楷書より來りし物にて篆文にちかく見ゆる
は故有ことなれは別に論有既に東坡志林

*凡例2v
に眞生行行生草眞如立行如行草如走
未有不能立能行而能走者也また宋郭
忠恕が云る小篆散而八分生八分破而
隸書出隸書悖而行書作行書狂而草書
聖ともあれは楷行草と次第せむに論有へから
すさてこは全く草書の論にして此書の趣意
ならねはこゝに略す予友外岡北海か草書辨と
いふ書に委しく論せりいてや今假字を論する
書なれは先かなのもとは草書なり又其もとを
論するに篆書を出したらむ時わらはへの爲に
いかてか心得らるへき〓てめ近き行書を出

*凡例3r
してさて楷書へもさかのほり證據とせしもの
なり草書の出處をもて此書を論すへからす
○凡草書より假字に至り假字中はなたらかに
成たるまて次第に見する趣意なれは其筆畫の
轉しさまさとりやすからむか爲に古人の書體にも
かゝはらすして文字の形いとみにくきも有ぬへし
○凡古人の説あまた有か中に其的當せると又是に
似て非なると又自己の僻説をあなかちに立て
よ人をまとはすと又種〻の説有て定かたきと其
時よりさきに云たる説を密にとりて我ものとし
たるとをは悉く擧論せり其他は略す

*凡例3v
○上層古人のかなを模せしはいさゝか例にあくる
のみひろくは假字類叢にあらはす
○上層假字の證據に秋萩と云は道風朝臣のあ
きはき帖なり〈數板有て論あれと一の墨本をとれり〉古今としるせるは延
喜頃の書の墨本古今集卷の五同卷の二十を云〈此筆者貫之
なるよしの奧書も有て皆人さることおもへとこは貫之なるへからぬ證有されと其代の人とはおもはる別に本朝墨帖論に委しくいへり〉
重百といふは行成卿の筆跡と云傳る重之百首を
云〈筆者の論は前に本朝墨帖論にいふ〉さて此三部にとゝめて此外の物を擧
ぬは思ふ故有ことにて前に本朝墨帖論にいふへし
○上層此三部に出ぬかなは其眞字のみをしるして他
の法帖にもとめす假字類叢を見て知へし

*凡例4r
○論中同體のかなにしていさゝか筆意をもてわくへ
きは假字類辨にいふ
○上下の字に連れる筆意にて體のかはれるけち
めは連假字格にいふ
○論中梵字竝に肥人書等の論委しきことは本朝
書話に論せり
○凡假字中譬へは「あ」に「安」「阿」のあみあけて「婀」「鞅」を
あけす「い」に「以」のみ擧て「伊」「異」「已」等の外「い」の音訓
の假字をあまねく擧ぬは此書もと童幼の爲に物し
て今の俗專ら行るゝ處の假字の筆意の謬を明め
むのみなれは通俗の假字にのみとゝめぬ廣くは

*凡例4v
さきに云る假字類叢を見て知へし
○論中古人を稱するに號又は字をもてあまねくよ
ふへきを稀ニ實名をもて云はいとむらいに聞ゆれと號
をもてよに呼なれたる有實名をもてよにとなへ馴
たるもあれはよ人の耳に近をもて擧たるなり
○凡論中諸説をあくるにおほくは其書の時代年暦を
もて次第せしか其説の序によりて稀ニはみたれ
たる處も有ぬへし
○凡おのかかうかへの書を新につゝらむことはいと難き
ことにて今かゝる明けき大御代に〓やまとの物しり達
おほく出きてともすれはあの考くれの辨ときそ

*凡例5r
ひつゝ板にゑり物せらるゝは其人の高きちからも
あらはれていみしくめてたき事なりさるを
今眞澄らか其數のうちに入むとするはいとをこかまし
くつめくはるゝわさなれとそのむかし長雨の意
のかちなと獨都然なる時〻こゝかしこよりかい
つめおきくし反古ひとつしを筆とるわさせぬ
道ひく童らか爲にひと日とう出てこれかれを
わかちぬれはいつしか五くさの書と成て卷の
數もこちたきまてになれりさるをこたひか
くつちのあらひなからむほとにと人〻そゝの
かし物するにあまえて人竝にこれもいたにゑらす

*凡例5v
とせしを〓ひとのいひけむやうにくすしは人を
つひやし筆とる人は紙をつひやすとかの
たくひにてよにふやくなることゝおもへはかつ
ははふきて此二卷とはなしぬかくても猶今
のかと有人にわらはれ後のよにあさけられぬ
へきたねとならむをいかゝはせむ
 文政五のとし源眞澄初おいのはるをむかへ
 てしるす

21:52

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