キリストの言葉にかういふのがあつたはずだ。「健康なものに医者が要らないやうに私は弱者のために来たのだ」とかいふのが。
もしキリストがその言葉を語るためだけにきていたとしたら、私は彼にひよいひよい着いて行つてしまつたかもしれない。しかし、彼は語りすぎている。そのためだけに私は親鸞に心引かれる。しかし、一切の自発を捨て、阿弥陀にすがることに反発する部分が大きいのもまた事実である。
かういふいざこざが、ここしばらく頭で細々と起きてゐる。ここしばらくはいつ始まつたか覚えてゐないときに使ひいい言葉である。
20:15
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
（中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984）
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