麦茶を煮出すのに使う水に、婦人は氷に使っている水と同じ物を選んでいる。氷は、山の中で作っている自然氷を買っているのだが、水も同じところから選んで買っている。麦は毎日自分で炒ったものを煮出しに使う。普段から使い慣れた薬罐にその水を注ぎ、ぐつぐつ言い出すまで待っている。
待っている間、ようやく、言葉を反復する。「父は自殺しました」…。
そろそろぐつぐつ言い出す頃になって、ようやく、婦人は言葉を反復させるのを止める。そして、茶漉しみたいなのに入れた、麦を薬罐へと投げ込む。薬罐は一瞬沈黙し、そして又勢いを取り戻す。火を加減しなければならない。だから、離れるわけには行かない。
しかし、この評判の麦茶を作るとき、麦茶を作る行為自体はいい、しかし、煮立てる時間の間、途方もなく麦茶から離れたくなる。
<続>
22:06
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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