「出来なかったと思います。あなたには、お父様の相談相手には成れなかったと思います。お父様が『このこと』について、どれほどにお考えになっていらしたかは、推して知るほかは有りませんが、あなたの考えるほど、お父様の頭の中で、この問題は大きくなかったと思うのです。それに、相談相手になって差し上げられたとして、それで、どうにもなりませんでしょう。あなたのお父様は結婚なさっていて、奥様がいらっしゃる。それに、過去の過ちを今更ぶり返そうなど、私たちは考えない年齢なのですよ、既に。」
婦人は微かに笑った。
「そう、明日でこの店を閉めるんですよ、それで、麦茶を作るのは今日が最後です。その最後のお茶を、最初にあなたに飲んでいただきましょう。」
そう言って立ち、麦茶の方へと向った。青年は、一言も喋らなかった…。
<続>
22:06
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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