「しかし、父はそういう思いこそ持ちすれ、自殺したのは、他の原因があってのことなのです。確かに、父は内心苦しんでいたのに相違ありませんでしょう。しかし、父は経営の行き詰まった会社の経営問題や、借金など、そちらのほうが理由と考えた方が妥当な問題をいくつももっていました。だから、すぐ来ても良かったのですが…、どうにも、気が進みませんでした。そのことでは、御責めにならないと思います。多分、あなたが私を責めるとすれば、父の相談相手となれなかったことでしょう。」
青年の目はきっと婦人の目の一点をじっと見ていた。婦人は青年の喋る間、青年を見つめ返していたが、青年が喋り終えると、うつむき、ゆっくりと、言葉を紡ぐと言う形容が似合う具合に、言葉を選びつつ話し始めた。
「私には、どこにも、あなたを責める権利などありませんし、たぶん、相談相手にもなって差し上げられなかったかと思います。」
<続>
22:12
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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