「今一、理解し切れていないのですけれど、要するに、彼が、私との関係を苦に思って自殺したとか、そういうことなんでしょうか?」
青年は、目を閉じ、ゆっくりと首を横に振った。少し思い詰めた顔をして、又ゆっくりと目を開き、意を決したようにこう言った。
「父は、何も言い残してはいません。父があなたを愛していると知っているのは、私だけです。父に連れられていったあの時、子供ながらも、父の態度がおかしいのを強く感じました。そうして、父が、あなたを愛していたと知ったのは、父が自殺したからなのです。」
そう言って青年は一つ息を吸い、又話し始めた。
「一報を受けた時、最初は私も冗談だろうと思いました。しかし、事実だったのです。言われてみると、あなたの店を訪れた時から、父は何だかおかしくなってきたのです。子供心に感じた違和感は、この一事を以って考えるより他ありません。父は、あなたを愛していて、そうして、家族へのやりきれない気持ちなどを背負って、自殺したのです。」
<続>
16:06
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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