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あれから大分経つが、あの客はまだ約束をはたしていない。婦人も、そろそろ希望だけで物事を進めるのがほとんど叶わない年齢となった。以前、丁度約束をしたときも、そろそろ潮時かと思い始めていた頃だった。しかし、あの約束を結んだことにより、まだ続けていく決心のようなものが出来たのだが、如何せん、年齢の事も有るし、もう、限界を過ぎようとしている…。どんなに強い希望を抱こうが、これだけはどうすることも出来ない。
そこで婦人は廃業を決心した。そして最後の日。最後だというので集まった人々が去って、婦人は一人になった。ベンチに座ってぼんやりしていると、ふと声をかけられた。
「おひさしぶりです。」
<続>
23:21
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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