「うん、おいしい。」
と、あの客の子供は、素直に応えた。口の周りを、宇治金時の、緑と小豆が染めていた。あの客は、子供の口を拭きながら、
「良く続けていらっしゃいますね。」
と言った。
「ええ、この場所が好きですし、夏だけしか開きませんから。」
例の、怪しい客と、あの客とは、隣り合わせだった。今の婦人には、怪しい客の動き動きが、全て怪しく見えて仕方が無い。
「そちらの方も、どうです?」
婦人は、声を掛けてみた。もう少しで食べ終えようかと言う客は、ちらとこちらを向き、「はい」と小さく答えた。
「それはそれは。」
婦人はにこやかに答え、「ゆっくりしていって下さいね。」と付け加えた。
<続>
16:59
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
DiaryMaker1.02b
Script written by れん©
Mail me for annul@karpan.net
annulをkzhrに@の後ろにmail.をつけてください。
著作權で保護されてゐる著作物は著作權者の許可なく、私的な範圍を超えた複製をしてはなりません。
Copyright some right reserved.
この日記のKzhrの作品については、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(by-sa 日本)
の下でライセンスされています。