かつて無いことに、婦人は内心喘いだ。もしかしたら、「怪しい」客は何もしないかもしれないし、よからぬ事をするかも知らない。ただ、体の割りに食べたがる人なのかも知れないし、そうじゃないかもしれない。助けて、助けて。
婦人はちらちらと、自分でも気付かずに、無意識で、あの客を見ていた。全く、無意識に、だった。そうして、「無意識に」見ている自分に気付き、自分に傷つき、自分を諌めた。婦人は、無意識を自らを滅ぼす元凶と、人一倍意識していた。
この客が何かしでかすなら、早めにそう出来なくさせてしまえば良い。でも、そうじゃなかったら、却って自分を危険に曝す。婦人は、その並人外れた意識の所為で、そこまで考えを発展させていた。そこで、婦人は、賭けに出た。
「坊や、おいしい?」
婦人は、あの客に助けを求めることにした。
16:42
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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