「五歳です。」
「可愛い盛りですね。」
と、婦人は、小豆を掛けて、一つ目の氷を手渡した。
「ふふふ、お変わり有りませんね、前と。」
受け取りながら、客が応える。
「ええ、この辺りはすっかり変わって仕舞いましたけど、私だけは。」
「私もあれから変わりない積りでしたけど、結婚して仕舞いまして。」
結婚と言うのは、して仕舞うと言いたくなる様なものなのだろうか、と、婦人は考えてみた。
「はあ、私は独身ですから、そういうことには疎くて。」
「…え。」
「…どうかしました?」
思い掛けない事に、婦人は手を止めた。
「い、いえ、何でもないです。」
客の目がきょろきょろしだしたのに、婦人は、何かを感じた。
<続>
16:27
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
DiaryMaker1.02b
Script written by れん©
Mail me for annul@karpan.net
annulをkzhrに@の後ろにmail.をつけてください。
著作權で保護されてゐる著作物は著作權者の許可なく、私的な範圍を超えた複製をしてはなりません。
Copyright some right reserved.
この日記のKzhrの作品については、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(by-sa 日本)
の下でライセンスされています。