§
そんな顛末を思い返す。
――あんな日もあった。
そういう風に思っている。あれからもう、十年も、二十年も巡り巡って、自分はまだこの店を開いている……。騒ぎながら氷を食べる子供たちを見ながら、それをおかしく思う。この老婦人は今も、老夫人ではないのだ。
「こんにちは、宇治金時を二つ。」
男の声がした。
「はあい。」
そう言って、婦人は氷を機械に掛けた。そして、挨拶でも言おうとその客の顔を見上げて…、婦人は何も言えなくなった。
<続>
10:54
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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