老婦人は、その後、その客に何も話し掛けず、ただ眺めた。
――優しそうな目付きをして、すらっと細身の体が、宇治金時と頭のなかで噛み合わなくって、可笑しい。
その視線に気付いたのか、客が婦人の側を向き、
「どうかしました?」
と尋ねてきた。婦人は慌てて、
「いえ、何でもありません。それより、雨が落ち着きませんね。」
と答えるので精一杯だった。
「そうですね。」
その客は、変なのとも、微笑したとも取れる表情をしていた。
客は、食べ終わった後、暫らく座っていたが、雨が小振りになると、
「ありがとうございました。」
と言って、出て行った。
<続>
16:45
——貪欲と嫌惡と迷妄とを捨て、結び目を破り、命を失ふのを恐れることなく、犀の角のやうにただ獨り歩め
(中村元譯『ブッダの言葉 スッタニパータ』74詩、岩波書店、1984)
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