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2006年9月6日(水)

キリシタン版の販賣

キリシタン版には、民間業者版ともいふべき後藤版と京都版の存在が確認されてをり、これらはいづれも販賣に供されたらしい[1]。川瀬一馬は「……原田アントニヨに據つて京都の地で「こんてむつす・むんぢ」の國字本が活字印行せられてゐるが、之は既に京洛に於いて假名交り活字印本が充分なる發達を遂げた後の事であるから、技術的なる方面其の他に就いても特別な影響を及さなかつた」[2]とみなせると述べたが、もし長崎學林版の『サルバトール・ムンヂ』が1500部以上刷られたといふ報告のやうな規模で京都版が刷られてゐたとしたら[3]――ただし、誰でも持つてゐるべき『サルバトール・ムンヂ』のやうな書目は、安價に信徒や布教の場にばらまかれてゐたと想像もできるので確かとしない[4]――、いづれにせよ、どのやうに販賣されたのだらうか。

[1] 新井トシ「巡察使ヴァリニャーノ師ときりしたん版の出版」天理圖書館編『キリシタン版の研究』天理大學出版部〈參考資料集〉、1973.3、p. 26。富永牧太「きりしたん版の印刷術」前掲書、p. 78。
[2] 川瀬一馬『古活字版之研究』増補版、上卷、日本古書籍商協會、1967、p. 150。
[3] 新井トシ、前掲書、p. 29。
[4] リュシアン・フェーヴル・アンリ=ジャン・マルタン『書物の出現』上、關根素子他譯、筑摩書房、1985.9、p. 108。

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