Diary/ + PCC + — HIMAJIN NI AI WO. Love Idle

2003年8月7日(木)

夏(5)

老婦人は、この人も数ある通過客に過ぎないと、最初は思った。しかし、どこか受ける感じが違うのだ。

「おばちゃん、麦茶くれい。」
 雨の日の売れ筋は、一番安い、麦茶。所詮、通過客は雨宿り代として飲み物を買うのだから、一番飲みやすい上、一番安い麦茶が一番選ばれる。他の客のように、駆け込んできたその人は、長居する気らしく、宇治金時を注文した。長居する客は、それほど、珍しくはない。

「珍しいですね、雨の日に宇治金時なんて。」
 その客を、婦人は今まで見た記憶がない。
「夏はいつも、宇治金時って決めてるんですよ。」
 渡された宇治金時を崩しながら、その人が答えた。
「皆さん雨止みを待つだけで、麦茶しか買っていってくれないんですよ。」
「そうですか。」
 その客は、宇治金時をゆっくりと口に運んだ。

<続>

21:33

  • 小説なのか?実話なのか? (柳川さん) 03 8/8 8:38
  • うちの老婦人は呉服屋はしてたけど、かき氷は売ってなかったよ (kzhrさん) 03 8/8 10:37
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